炭やきの火の消し方でやき分ける白炭と黒炭

 日本でやかれている木炭を、その炭質によっで分けると「白炭(シロズミ)」と「黒炭
(クロズミ)」の二種類がある。どちらもやき方にそれほど大きな違いはないが、やきあ
がるときの火の消し方で、その炭質はまったく異なったものになる。
 同じ原木をやいた炭でも、白炭と黒炭とでは、たとえば炭素、酸素、水素、灰分などの
成分も、かたさ、発熱量、火つきや火もちのよさなどの性質(燃焼性)も違ったものにな
る。

白炭  白炭は、炭やきの仕上げ段階でかまのなかに空気を入れ、ほぼやきあがっている炭を約 1300度の高温で燃やし、ころあいを見て、真っ赤になった炭をかま口から取り出し、 灰と土を混ぜ、水分を含ませた消粉をかぶせてすばやく冷やしながら消すが、この一連の 作業のことを白炭の「ねらし」という。  白炭は表面に白い灰がつくのでその名があるのだが、炭質がかたいので、一般には「カ タズミ」ともよばれでいる。世界で白炭をやいているのは、日本を中心に中国文明の伝統 を受け継いでいるアジアのごく一部の国に限られる。 白炭の代表的なものは、ウバメガシからつくられる備長炭で、鋼のようにかたく、たたき 合わせると、キンキンと金属のような音がする。火力が強く、火もちのよいのが特徴であ る。 燃やすと、パチパチはねる炭もあるが、これは炭に含まれている水分や硫黄などのガス分 が熟せられてはじけるために起こる現象で「爆跳、ばくちょう」とよばれている。 高温でやきあげられる白炭は、炭がまのなかで水分やガス分はすっかり燃焼させているの で、いきなり加熱しないかぎり炭火の状態ではねるようなことはほとんどない。 白炭には備長炭のほか、秋田、長野県北部で生産されているナラ白炭、高知、大分、宮崎 県で生産されているがカシ白炭などが知られでいる。
黒炭  黒炭のばあい、炭化温度はだいたい400〜700度で炭化が終わり、その段階でかま 口や煙道口を石や粘土で密閉する。ちょうど火消し壷と同じ要領でかまのなかの火が消さ れ、そのまま冷やしてからかま口を開き、やきあがった炭を取り出す。かまが冷えてから かま口を開くので、白炭のように灰がつかず、表面が黒いので黒東とよばれている。  世界で生産される木炭まずべて黒炭だが、日本のばあいは生の木をゆっくり炭化させる ので、よくしまった良質の炭になる。 炭材に用いられるのはクヌギ、コナラ、カシなど、ナラ類の木が多く、「ナラ炭」の商品 名で市販されている。市販の黒炭の代表的なものは「岩手木炭」で、ミズナラを炭材とし ている。 一般にナラ類の黒炭は、白炭にくらべで炭質がやわらかで、火つきがよく、立ち消えも少 ない。 また、その他の炭材でやかれた国炭は「雑炭」として区別されている。  こうした国産の木炭のほかに、海外から輸入される木炭も増えている。産地はほとんど 東南アジア、スリランカで、ヤシガラ炭が多く、活性炭の原料に使用されてしるがマンク ローブ(熱帯地方の海岸で生育する植物)やゴムの木をやいた炭も年間数千トン輸入され ている。 マングローブ炭は硬質で、外観が備長炭に似ているために「南洋びんちょう」の名で市販 されでいるが、やき方が不十分で煙を出すものもある。マングローブは海辺の植物なので 塩分を含み、料理に使うと、焼き肉や什器などに白い粉となって付着することもある。 ゴムの木をやいた炭もバーベキュー用燃料として市販されているが、おもに工業用に使わ れている。